久々の…
課対抗野球に出た。
一週間前までは出るつもりは全く無かった。
しかし、人手が足りないため、断りきれずにピッチャーを引き受けた。
ボールに触れるのは2年ぶり。
試合前、ずっと後悔し続けた。
「何故引き受けてしまったのだろう…」
未だにまともに歩けない。
すぐ目の前のトイレに行くだけでフラフラする。
「こんな身体でピッチャーなんて不可能だろう」
球場に向かう途中、奇跡的に歩き方が治らないか期待したが、そんなことは起こるはずもない。
球場についた後、ウォーミングアップをしようとする。でも、走り方が分からない。無理矢理走るも、足の感覚がおかしい。思ったところに足が着かない。
続々と集まり出す観客。
皆顔見知りだが、股関節の不調に苦しんでいることを知る人はいない。
グズグズのピッチングで、野次られるのではないか?
なんだアイツ?って思われないか?
帰宅後に悔やんで眠れないのではないか?
不安がよぎる。
あっという間に試合開始。
気持ちの整理がつかないまま、マウンドに立つ。
立ったときの感覚がおかしい。物凄く猫背。
しかし、投げるボールはしっかりとストライクゾーンに入る。
キャッチボールでも乱れてしまうのに、何故かマウンドから打者に向けて放る球は、ストライクゾーンに入る。
却って、暫く投げていなかったのが良かったのか、肩の痛みもあまりない。
勿論あの時のような速球は投げられない。
しかし、フォームが時折乱れることによる球筋の変化が、却って打ちにくさに繋がったのだろう、三振も幾つかとった。
投げている途中、マラソンで感じたような感謝の気持ちが沸いてくるのを感じた。
そもそもピッチャーをやらせてもらえたこと、自分相手に勝負してくれるバッター。
励ましてくれる野手。労いの言葉をかけてくれる観客。
試合は強敵相手にそれなりの接戦。
負けはしたが、皆自分を褒めてくれた。
試合作りに貢献できたこと、お役に立てたことに嬉しさを感じた。
回復の目処すら立たない身体。
日々そのことで頭が一杯一杯の自分。
そんなときに、野球が自分を励ましてくれた。
嫌な記憶が大半を占める野球。
でも、今日は一言。
「ありがとう」